調達業務に携わる中で、RFP(提案依頼書)やRFI(情報提供依頼書)の作成に膨大な時間を費やしていないでしょうか。私がこれまで多くの企業の調達部門と対話してきた中で、「過去案件を参照しながら要件を整理し、公平性を保ちながらベンダー比較表を作る」という一連の作業に、担当者が1案件あたり数日から1週間を要している実態を繰り返し目にしてきました。本記事では、Claude Code を活用して RFP/RFI 作成プロセスを標準化し、要件定義から評価まで一貫して効率化する具体的な手順を、調達業務特有の制約条件とともに解説します。

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本記事の結論: Claude Code で過去案件から要件を抽出し、テンプレートベースで RFP を自動生成、ベンダー提案の比較表まで一気通貫で作成することで、調達担当者の文書作成負荷を軽減しつつ、公平性と再現性を担保できる

RFP/RFI 作成における典型的な課題と自動化の狙い

調達部門が直面する RFP 作成の課題は、大きく以下の3点に集約されます。

まず、要件定義の属人化です。過去の類似案件を参照しながら要件を洗い出す作業は、担当者の経験と記憶に依存しがちで、「前回はこの項目を入れたはずなのに今回漏れた」という事態が起きやすくなります。特に間接材や IT システム導入のような案件では、技術要件と業務要件が混在し、整理に時間がかかります。

次に、文書フォーマットの非統一です。企業によっては RFP のテンプレートが整備されていても、実際には担当者ごとに微妙に書式が異なり、後工程での比較・評価がしづらくなります。特に複数部門から要望を集約する案件では、各部門が提出してきた情報の粒度がバラバラで、統合作業に手間がかかります。

そして、ベンダー提案の比較表作成の煩雑さです。複数社から提出された提案書を横並びで比較する際、項目の抜け漏れや表現の揺れを人手で整理すると、数時間から丸1日を要することも珍しくありません。評価基準の公平性を保つため、定量・定性の両面で客観的な比較軸を設定する必要がありますが、この作業自体が属人的になりがちです。

Claude Code を活用した自動化の狙いは、これらの課題に対して「過去案件の構造化データとして蓄積し、テンプレートベースで再現可能な形で RFP を生成し、ベンダー提案を統一フォーマットで比較する」という一連のフローを実現することにあります。ただし、ここで重要なのは「完全な無人化」ではなく、「担当者の判断を支援し、標準化と公平性を担保する仕組み」として設計することです。

調達業務では、ベンダーとの取引履歴や過去の見積情報など機密性の高いデータを扱うため、Claude Code のプロジェクト設計時にアクセス権限の設定とログ管理を明確にする必要があります。詳細は Claude Code 活用のコンプライアンスとリスク管理 を参照してください。

テンプレート設計と過去案件からの要件抽出

RFP/RFI 作成の自動化において最初に着手すべきは、標準テンプレートの設計過去案件データの構造化です。

標準テンプレートの構成要素

調達案件の種類(物品購入・サービス契約・システム導入など)によって必要な項目は異なりますが、一般的な RFP テンプレートには以下の要素が含まれます。

1. 案件概要 — 調達の背景・目的、対象範囲、想定スケジュール

2. 要件定義 — 機能要件・技術要件・業務要件を階層化して記述

3. 提案依頼事項 — 見積内訳、導入計画、保守体制、実績情報など

4. 評価基準 — 価格・品質・納期・サポート体制などの評価軸と配点

5. 契約条件 — 支払条件、契約形態、機密保持条項、瑕疵担保など

Claude Code では、これらの項目を Markdown や JSON 形式でテンプレート化しておき、案件ごとに必要な箇所を埋める形で運用します。テンプレートはバージョン管理(Git など)で履歴を残し、改訂理由を明示することで、将来の監査や内部統制にも対応できる状態を保ちます。

過去案件からの要件抽出プロセス

過去の RFP ファイル(Word・PDF など)が蓄積されている場合、Claude Code を使って以下の手順で要件を抽出・構造化できます。

  1. ファイル形式の統一: PDF や Word を Markdown や JSON に変換し、テキストベースで扱えるようにします。Claude Code によるドキュメント解析と知識抽出 の手法を応用すると、章立て構造やテーブルを保持したまま変換が可能です。

  2. 要件項目の抽出と分類: Claude に「過去3件の IT システム導入 RFP から、機能要件・技術要件・契約条件を抽出し、JSON 形式で出力せよ」といったプロンプトを与えると、共通項目と案件固有項目を区別して整理してくれます。このとき、個社名やベンダー名などの固有名詞は匿名化し、汎用的な表現に置き換えることで、再利用しやすい形にします。

  3. 要件ライブラリの構築: 抽出した要件を「機能カテゴリ」「技術スタック」「契約タイプ」などの軸で分類し、再利用可能な「要件ライブラリ」として蓄積します。新規案件では、このライブラリから該当する要件をピックアップし、案件固有の調整を加える形で RFP を組み立てます。

実際の運用例として、ある製造業の調達部門では、過去5年分の間接材 RFP 約30件を Claude Code で分析し、「安全基準」「納期条件」「品質保証」などの頻出要件を抽出してライブラリ化しました。新規案件では、まずライブラリから該当項目を選択し、案件特有の仕様を追記する形で RFP を作成することで、従来1週間かかっていた文書作成を2〜3日に短縮できたとの報告を受けています。ただし、短縮幅は案件の複雑さや既存資料の整備状況に依存するため、一律の効果を期待するのではなく、まずは小規模案件で試行し、改善ポイントを洗い出すことを推奨します。

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要件ライブラリに蓄積する情報は、企業固有の調達基準やベンダー評価ノウハウを含むため、機密性が高いデータです。Claude Code のプロジェクトファイルへのアクセス権限を調達部門に限定し、外部共有リンクの無効化やログ監視を徹底してください。

RFP 自動生成の実装と公平性担保

テンプレートとライブラリが整備できたら、次は案件情報を入力として RFP を自動生成するフローを構築します。

入力情報の設計

RFP 生成に必要な入力情報を、以下のように構造化します(例:JSON 形式)。

{
  "案件名": "○○システム導入",
  "調達部門": "情報システム部",
  "目的": "既存システムの老朽化対応とクラウド移行",
  "対象範囲": "営業管理・在庫管理・請求管理の3機能",
  "想定予算": "3000万円",
  "納期": "2025年9月末",
  "必須要件": ["クラウド対応", "API連携", "モバイル対応"],
  "評価重視項目": ["価格", "導入実績", "サポート体制"]
}

この入力を元に、Claude Code が以下の処理を実行します。

  1. 要件ライブラリからの該当項目抽出: 「クラウド対応」「API連携」といったキーワードに紐づく要件項目をライブラリから検索し、候補として提示します。
  2. テンプレートへの自動挿入: 抽出した要件を RFP テンプレートの該当セクションに挿入し、案件名・目的・納期などの基本情報も反映します。
  3. 評価基準の自動生成: 「評価重視項目」に応じて、評価シートのテーブルを生成します。価格・品質・納期などの項目ごとに配点と評価基準を設定し、公平性を担保します。

公平性と客観性の確保

調達業務では、ベンダーに対する公平な評価が法令・内部規程で求められます。Claude Code による自動生成においても、以下の点に留意します。

確保すべき要素実装上の工夫
評価基準の事前明示RFP に評価項目と配点を明記し、後から変更しない仕組み(バージョン管理)
定量評価の優先価格・納期・実績件数など、数値化可能な項目を評価軸に含める
定性評価の基準明確化「サポート体制」などの定性項目は、5段階評価の判断基準を文章で示す
評価プロセスの記録評価シートの変更履歴をログとして残し、監査時に説明できる状態にする

実際の運用では、RFP 生成後に調達部門の責任者が最終確認し、公平性・合理性を担保した上で発行するフローとします。Claude Code はあくまで「たたき台の生成」を担い、最終判断は人が行うという役割分担が重要です。

評価基準の配点や必須要件の設定が、特定のベンダーに有利になるよう意図的に操作されていないか、定期的に内部監査で確認する体制を整えてください。自動化によって「形式的には公平だが実質的には偏りがある」状態が見えにくくなるリスクに注意が必要です。

ベンダー提案の比較表自動生成

RFP を発行し、複数のベンダーから提案書を受領した後、比較表を自動生成するプロセスを構築します。

提案書の構造化と情報抽出

ベンダーから提出される提案書は、PDF・Word・Excel など形式がバラバラであることが一般的です。Claude Code を使って、以下の手順で情報を抽出・構造化します。

  1. PDF/Word からのテキスト抽出: Claude の Documents 機能や API 経由でファイルを読み込み、章立てやテーブル構造を保持したまま Markdown 化します。
  2. 評価項目に対応する情報の抽出: RFP で指定した評価項目(価格・納期・実績・サポート体制など)に対応する記述を、Claude に抽出させます。たとえば「納期」セクションから「2025年8月末納品」、「実績」セクションから「同業種導入12件」といった情報を JSON 形式で出力します。
  3. 表現の揺れの吸収: 「導入実績」「納入実績」「過去事例」など、ベンダーごとに異なる表現を統一します。Claude に「同義語を統一し、数値は単位を揃えよ」と指示することで、比較しやすい形にします。

比較表の自動生成とランキング

抽出した情報を元に、以下のような比較表を自動生成します。

評価項目ベンダーAベンダーBベンダーC
価格(税抜)2,800万円3,200万円2,500万円
納期2025/8末2025/9末2025/7末
導入実績(同業種)15件8件20件
サポート体制(24h対応)×
総合スコア(100点満点)85点72点90点

総合スコアは、RFP で設定した評価基準と配点に基づいて自動計算します。価格・納期などの定量項目は、範囲内/範囲外を機械的に判定し、サポート体制などの定性項目は、事前に定めた評価基準(「24時間対応=5点、営業時間内対応=3点」など)に照らして採点します。

この比較表を調達部門内で共有し、最終的な選定判断は複数名のレビューを経て決定します。Claude Code による自動生成はあくまで「情報整理と一次評価」であり、価格以外の要素(ベンダーの信頼性・長期的な関係性・戦略的な提携可能性など)を総合的に判断する最終ステップは人が担います。

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ベンダー提案書には、他社の製品名や技術情報など機密性の高い内容が含まれることがあります。比較表の生成プロセスで、これらの情報が外部に漏れないよう、Claude Code のプロジェクトを組織外に共有しない運用ルールを徹底してください。

機密情報の取り扱いとコンプライアンス要件

調達業務における自動化では、機密情報の管理法令・社内規程の遵守が最優先課題です。

機密情報の範囲と保護策

RFP/RFI 作成および評価プロセスで扱う機密情報には、以下が含まれます。

  • 過去の調達価格・見積情報: ベンダーとの取引履歴、値引き率、契約条件など
  • 社内の予算・戦略情報: 調達案件の背景となる事業計画、投資予算枠など
  • ベンダーの提案内容: 他社に開示されてはならない技術情報、価格情報など

これらの情報を Claude Code で扱う際は、以下の保護策を講じます。

  1. プロジェクトのアクセス制限: Claude Code のプロジェクトを調達部門専用に設定し、関係者以外がアクセスできないようにします。
  2. データの匿名化: 過去案件から要件を抽出する際、ベンダー名・個社名を匿名化し、「ベンダーX」「案件Y」といった記号で管理します。
  3. ログの監視と保存: 誰がいつどのファイルにアクセスし、どのような操作を行ったかをログとして記録し、定期的に監査します。詳細は Claude Code 活用のコンプライアンスとリスク管理 を参照してください。

法令・社内規程の遵守

調達業務は、企業によっては社内規程や業界ガイドラインで厳格なルールが定められています。たとえば、以下のような規程が一般的です。

  • 相見積もりの義務: 一定金額以上の案件では、複数社から見積を取得すること
  • 利益相反の回避: 調達担当者とベンダーとの利害関係を事前申告すること
  • 契約書の法務審査: 契約条件に法的リスクがないか、法務部門の承認を得ること

Claude Code による自動化は、これらの規程を「回避する」ためではなく、「効率的に遵守する」ために活用します。たとえば、RFP 生成時に「相見積もり対象」フラグを自動で付与し、評価時に利益相反チェックリストを生成するといった補助機能を組み込むことで、コンプライアンスの抜け漏れを防ぎます。

Claude Code によるベンダー管理と取引先データベース構築 の手法を応用すると、ベンダーとの過去取引履歴やリスク情報を一元管理し、利益相反チェックや信用調査を効率化できます。

評価基準の客観性担保と属人化の排除

RFP 評価において、評価基準の客観性を保つことは、調達部門の信頼性を左右する重要な要素です。

評価基準の設定プロセス

評価基準は、以下のステップで設定します。

1. 評価項目の洗い出し — 価格・品質・納期・サポート・実績など、案件に応じた評価軸を列挙

2. 配点の決定 — 各項目の重要度に応じて配点を設定(例:価格30点、品質25点、納期20点、サポート15点、実績10点)

3. 評価基準の文書化 — 定性項目(サポート体制など)は5段階評価の判断基準を具体的に記述(例:「24時間対応=5点、営業時間内対応=3点、メール対応のみ=1点」)

4. 事前レビューと承認 — 調達部門内の複数名で評価基準をレビューし、公平性・合理性を確認した上で決裁

Claude Code を使うと、過去の類似案件から「この種類の調達では価格を最重視している」「この業界ではサポート体制が決定要因になる」といった傾向を抽出し、評価基準の設定根拠として活用できます。ただし、あくまで「参考情報」として提示し、最終的な配点は調達担当者が案件の特性を踏まえて判断します。

属人化の排除と再現性の確保

評価基準を明文化しても、実際の採点が担当者の主観に左右されては意味がありません。以下の工夫で属人化を排除します。

施策効果
評価シートのテンプレート化評価項目・配点・判断基準を固定し、担当者が勝手に変更できないようにする
複数名評価とスコア平均同一提案を複数名が独立に評価し、スコアの平均を取る(極端な偏りを検出)
評価理由の記述義務各項目で採点した理由をコメント欄に記入させ、後から検証可能にする
過去評価との比較類似案件の過去評価スコアと比較し、今回の評価が妥当かを確認する

Claude Code を使って、過去の評価シートから「この評価項目でこのスコアを付けた理由」を抽出し、ナレッジベースとして蓄積しておくと、新任担当者でも一定の評価精度を保てるようになります。

導入ステップと段階的な展開

Claude Code による RFP/RFI 作成自動化を実際に導入する際の、現実的なステップを示します。

1. 小規模案件でのパイロット実施(1〜2ヶ月) — 間接材や定型的な調達案件など、リスクの低い領域で試行し、テンプレートと要件ライブラリの初版を構築

2. 要件ライブラリの拡充(2〜3ヶ月) — 過去案件を順次分析し、頻出要件を抽出してライブラリに追加。調達部門内でレビュー会を開催し、再利用性の高い要件を精査

3. 評価プロセスの標準化(3〜4ヶ月) — 評価基準の設定方法と採点プロセスを文書化し、部門内で共有。複数名評価のワークフローを確立

4. 大型案件への適用と改善(4〜6ヶ月) — IT システム導入や大型設備調達など、金額・重要度の高い案件に適用し、公平性・効率性を検証。必要に応じてテンプレートや評価基準を改訂

導入初期は、自動生成した RFP を「たたき台」として扱い、調達担当者が内容を精査・修正する前提で運用します。数ヶ月運用して精度が上がってきたら、修正箇所を減らし、最終確認のみで発行できる状態を目指します。

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導入初期は、既存の調達プロセスを「一部自動化」する形で始め、調達担当者が成果を実感できる範囲から徐々に拡大することを推奨します。全面的な置き換えを急ぐと、現場の抵抗や運用トラブルが発生しやすくなります。

まとめ

本記事では、Claude Code を活用した RFP/RFI 作成自動化の具体的な手順を、調達業務特有の制約条件とともに解説しました。

4ステップ
導入プロセス
3要素
公平性担保施策
5項目
標準評価軸

重要なポイントを再掲します。

  • テンプレートと要件ライブラリを整備し、過去案件から再利用可能な要件を抽出することで、RFP 作成の属人化を減らせます
  • 評価基準の事前明示と文書化により、ベンダーに対する公平な評価を担保し、内部監査にも対応できます
  • 機密情報の保護とコンプライアンス遵守を前提とした運用ルールを設計し、自動化がリスクにならないよう注意します
  • 段階的な導入により、現場の受容性を確保しつつ、実運用の中で改善を重ねることが成功の鍵です

調達業務における文書作成の効率化は、単なる時間削減ではなく、公平性・再現性・客観性の向上という本質的な価値を持ちます。Claude Code を「人の判断を支援するツール」として位置づけ、調達部門の専門性を補完する形で活用することが、持続可能な業務改善につながります。


株式会社デジライズの Claude Code 法人導入支援では、調達部門向けに以下のサポートを提供しています。

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