「Claude Code に大きなタスクを渡すと、1つのセッションが黙々と順番に作業する」——この常識が、2026年5月28日に覆りました。Anthropic が発表した Dynamic Workflows(ダイナミックワークフロー) は、Claude 自身がタスクに合わせて JavaScript のオーケストレーション・スクリプトを書き、数十〜数百のサブエージェントをバックグラウンドで協調動作させる仕組みです。

弊社 DigiRise は500社以上の Claude Code 法人導入を支援していますが、この機能は「AIに作業を手伝わせる」フェーズから「AIのチームに仕事を丸ごと委任する」フェーズへの転換点だと捉えています。本記事では、仕組み・使い方・企業での活用パターン・導入時の注意点までを一気に解説します。

i

本記事の結論: Dynamic Workflows は「計画をコードに移す」機能。プロンプトに ultracode と書くだけで、Claude がループ・分岐・並列実行を含むスクリプトを自動生成し、最大1,000エージェントを協調させる。コードベース全体の監査・大規模移行・徹底リサーチのような「1セッションでは抱えきれない仕事」に絶大な効果がある一方、トークン消費は通常セッションより大幅に増えるため、企業導入ではスコープ設計とガバナンスが成否を分ける。

Dynamic Workflows のアーキテクチャ — Claudeが書いたオーケストレーションスクリプトがランタイム上で多数のサブエージェントを並列協調させる
図1. Dynamic Workflows の全体像 — 「計画」がスクリプトになり、実行はランタイムが担う

Dynamic Workflows とは何か

公式ドキュメントの定義はシンプルです。「Claude がタスクに応じたオーケストレーション・スクリプト(JavaScript)を書き、ランタイムがそれをバックグラウンドで実行して、多数のサブエージェントを大規模に協調させる」。実行中もメインセッションは応答可能なままで、進捗は /workflows でいつでも確認できます。

従来のサブエージェント機能との最大の違いは、制御フローの置き場所です。

従来のサブエージェントDynamic Workflows
制御の主体Claude が毎ターン判断スクリプト(コード)が決定論的に制御
ループ・分岐Claude のコンテキスト内で管理スクリプトが保持(コンテキストを汚さない)
スケール1ターンに数タスク1実行で数十〜数百エージェント
中間結果メイン会話に蓄積スクリプト内で処理、最終結果のみ返る
品質担保自己レビュー中心独立エージェント同士の敵対的レビューを組める

「ループ回数」「どの結果を次の工程に渡すか」「何件見つかったら打ち切るか」といった判断をコードに固定できるため、LLM の気まぐれに左右されない再現性のある大規模実行が可能になります。これが「計画をコードに移す(move the plan into code)」という公式の表現の意味です。

Claude Code の基本をまだ押さえていない方は、先に Claude Code とは何か完全ガイド 2026をご覧ください。

使い方は3つ — まずは「ultracode」と書くだけ

Dynamic Workflows は Claude Code v2.1.154 以降で利用でき、対象は**全有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)と API 経由(Anthropic API / Bedrock / Vertex AI / Microsoft Foundry)**です。Pro プランのみ /config の「Dynamic workflows」をオンにする必要があります。

方法1: プロンプトに ultracode と書く — 例:「ultracode: src/routes/ 配下の全APIエンドポイントの認可チェック漏れを監査して」。自然言語で「ワークフローを使って」と頼んでも起動します(v2.1.160 より前のバージョンではキーワードが workflow でした)

方法2: /effort ultracode — そのセッション中、実質的なタスクすべてに最高推論努力+自動ワークフロー化が適用されるモード。大規模リファクタリングの日など「今日は全部本気で」という働かせ方ができます(新セッションでリセット)

方法3: バンドル済みワークフローを使う/deep-research <質問> は複数角度のWeb検索→クロスチェック→出典付きレポートまでを1コマンドで実行する公式ワークフローです

管理は /workflows — フェーズ別のエージェント数・トークン・経過時間を一覧表示。p で一時停止/再開、x で停止、s でスクリプトを保存。保存したワークフローは .claude/workflows/(チーム共有)に置かれ、以後 /<名前> で何度でも再実行できます

Dynamic Workflows の3つの起動方法 — ultracodeキーワード、/effort ultracode、/deep-research
図2. 起動は3通り — もっとも簡単なのはプロンプトに「ultracode」と書くこと

特に注目すべきは **s(スクリプト保存)**です。一度うまくいったワークフローを .claude/workflows/ に保存してチームで共有すれば、「先輩エンジニアの仕事の進め方」そのものが再利用可能な資産になります。スキル機能が「手順書の共有」だとすれば、Dynamic Workflows は「プロジェクトマネジメントの共有」です。

実例 — Bun・Klarna・サイバーエージェント

公式ブログでは、すでに実戦投入した組織の事例が紹介されています。

**Bun(Jarred Sumner 氏)**は、JavaScript ランタイム Bun のコードベースを Zig から Rust へ移植するという巨大プロジェクトに Dynamic Workflows を活用。約75万行の Rust コードを生成し、既存テストスイートの99.8%をパスさせたと報告しています。人間のチームなら年単位の作業です。

Klarna は大規模コードベースのデッドコード検出に活用し、静的解析ツールより優れた結果が得られたと言及しています。「コードを読んで文脈で判断する」エージェントの群れだからこそ、ツールでは拾えない「実質的に死んでいるコード」を発見できます。

そして日本企業ではサイバーエージェントが公式ブログに登場し、「単一エージェントとフルチームの間のギャップを埋める」と評価しています。同社はエンジニア約1,200名に月額200ドルのAIエージェント利用費を会社負担する方針(総額約4億円規模)を打ち出しており、日本でも先進企業はこの規模で投資を始めています。

75万行
BunのZig→Rust移植で生成
99.8%
既存テストスイート合格率
1,000
1実行あたり最大エージェント数

企業で効く3つのユースケース

弊社が法人支援の現場で「これは Dynamic Workflows 向きだ」と判断する典型パターンは次の3つです。

① コードベース全体の監査・棚卸し — セキュリティ監査、ライセンス確認、デッドコード検出、命名規約違反の洗い出し。「全ファイルを漏れなく見る」必要がある仕事は、ファイル群を分割して並列に読ませ、結果を集約する構造が最適です。発見項目を別のエージェントが「本当に問題か」と敵対的に検証するパターンを組めば、誤検知も大幅に減らせます。

② 大規模マイグレーション — フレームワーク移行、言語移植、API仕様変更の一括追従。対象箇所の洗い出し→個別変換→テスト検証という工程をスクリプトが管理するため、途中でブレずに完走します。

③ 徹底リサーチ・デューデリジェンス — 競合調査、技術選定、M&A前の技術デューデリ。/deep-research をベースに、自社の観点を加えたカスタムワークフローを保存しておけば、調査品質が個人のスキルに依存しなくなります。

経営層向けの活用設計は 経営者のためのKPIフレームワーク、部門展開の考え方は Claude Code 導入ガイドも参考にしてください。

導入前に知るべきコストとガバナンス

!

注意: Dynamic Workflows は通常セッションより大幅にトークンを消費します。使用量はプランのレート制限にカウントされるため、無計画に走らせるとチームの上限を一気に使い切ります。公式も「まず小さなスコープで試す」ことを推奨しています。

押さえるべき仕様は以下の通りです。

  • 同時実行は最大16エージェント(CPUコア数が少ないマシンではさらに減少)、1回の実行で合計最大1,000エージェント
  • サブエージェントは常に acceptEdits モードで動き、セッションの許可リストを継承する。つまり「メインセッションに与えた権限」がそのまま並列実行される前提で権限設計が必要
  • 実行中のユーザー介入は不可(一時停止・停止は可能)。同一セッション内なら中断後の再開ができ、完了済みエージェントの結果はキャッシュされる
  • 組織管理者は managed settings または管理画面で組織全体の無効化が可能"disableWorkflows": true / 環境変数 CLAUDE_CODE_DISABLE_WORKFLOWS=1

企業導入では「誰がどの規模のワークフローを実行してよいか」「コスト上限をどう監視するか」をルール化することが不可欠です。この設計は セキュリティ・ガバナンス チェックリストとセットで進めてください。プラン選定(Team か Enterprise か)に迷う場合は Team vs Enterprise 完全比較をどうぞ。

よくある質問

Q. Pro プランでも使えますか? 使えます。ただし /config で「Dynamic workflows」をオンにする必要があります。Team / Enterprise はデフォルトで利用可能です。

Q. 既存のサブエージェントやスキルは不要になりますか? なりません。数タスクの並列なら従来のサブエージェント、手順の標準化はスキル、大規模協調は Dynamic Workflows と、レイヤーが異なります。公式も使い分けを明示しています。

Q. 定期実行と組み合わせられますか? /loop による定期実行Routines(クラウド定期実行)と組み合わせれば、「毎朝コードベースを監査して問題があればPRを立てる」といった完全自動の運用も設計できます。

まとめ — 「AIチームに委任する」企業が勝つ

Dynamic Workflows の登場で、Claude Code は「優秀なペアプログラマー」から「指揮可能なエンジニアリング組織」に進化しました。楽天やサイバーエージェントのような先行企業は、すでにこの前提で開発体制を再設計し始めています。

一方で、トークンコストの管理、権限設計、ワークフロー資産の標準化など、個人利用とはまったく異なる設計課題があるのも事実です。「どの業務から始めるべきか」「自社のガバナンス要件で安全に使えるか」——この問いに最短で答えを出したい方は、500社以上の導入知見を持つ DigiRise にご相談ください。研修・PoC設計・全社展開まで一気通貫で支援します。